請求書がデータになってから、支払漏れが増えた。保存したところで安心してしまう

「先月分のお支払いが、まだ確認できておりません」

取引先からの督促で、支払漏れに気づきました。請求書を探すと、ちゃんと保存されています。なのに、会計システムでの支払の申請がされていませんでした。

請求書をデータで受け取るようになって、こういう漏れがたびたび起きています。保存した段階で、済ませた気になってしまうのです。

請求書をPDFで受け取る記事では、紙をやめてPDFに寄せたいと書きました。その方針は変えません。ただ、紙をやめたことで、見えなくなったものがあります。

紙の束は、残りの仕事を見せていた

紙の請求書のころは、机の上に束がありました。

申請を済ませるまで、束は減りません。束の厚みが、そのまま残りの仕事の量でした。月末が近づいて束が残っていれば、いやでも目に入ります。

データになると、この束がなくなります。処理を済ませたPDFも、まだのPDFも、同じフォルダに同じ顔で並びます。どれが残りの仕事なのか、見た目では分かりません。

保存と申請が、別の動作になった

もう一つの違いは、作業の順番です。

紙のときは、受け取って、申請して、最後に綴じていました。綴じる前に申請がはさまるので、申請しないと片付きません。

PDFでは、受け取ってすぐ保存します。保存は、電子帳簿保存法で求められる大事な作業です。だからこそ、保存した時点で「片付いた」と感じてしまう。申請は、別の画面で行う別の作業として、後に残ります。

紙で届く請求書も同じです。郵送で届いた紙は、スキャンして保存しています。スキャンを終えると、それで一仕事終えた気になる。紙の束が消えるのは、ここでも同じです。

入口が三つある

請求書の入口は、一つではありません。

入口 流れ
経理に直接 取引先から経理にPDFが届く
営業部門から転送 営業の担当者に届いたPDFが、経理に転送される
郵送の紙 紙で届き、経理がスキャンして保存する

入口が分かれると、残りの仕事も分かれます。経理の受信箱、転送のメール、スキャンのフォルダ。どこにも束はなく、全部を一度に見渡す場所がありません。

転送には、もう一つの穴があります。営業の担当者は、転送した時点で手を離します。経理は、届くまで請求書の存在を知りません。転送が遅れたり、忘れられたりすれば、漏れは経理の外で起きます。

「気をつけましょう」は対策にならない

支払漏れが起きると、つい「申請を忘れないように」と声をかけたくなります。

でも、忘れたのは注意が足りなかったからではありません。紙の束という、残りを見せる仕組みがなくなったからです。仕組みが抜けたなら、仕組みで埋めるしかありません。

考えた対策は三つです。

対策1:保存の場所を「未処理の箱」にする

受け取ったPDFを入れるフォルダを、二つに分けます。「受付(未申請)」と「申請済み」です。

三つの入口から来たものは、どれもまず受付に入れます。経理に届いたPDFも、営業から転送されたPDFも、紙をスキャンしたデータもです。営業には、担当者あての転送ではなく、請求書の受付用のアドレスに送ってもらいます。申請が済んだら、申請済みに移します。受付に残っているPDFの数が、紙の束の厚みの代わりになります。

毎日の終わりか、少なくとも支払の締めの前に、受付が0件かを確かめます。

この方法は、今の仕組みのまま明日から始められます。そのかわり、移す手間がかかり、移し忘れも起きます。移し忘れは、申請済みなのに受付に残るほうに出ます。漏れの側には倒れないので、まだ安全です。

対策2:来るはずの請求書を一覧にして突き合わせる

家賃、システムの保守、毎月の外注費など、毎月決まって来る請求書があります。これを一覧にしておきます。

締めの前に、一覧と申請済みのものを突き合わせます。申請が見当たらない取引先があれば、確かめます。請求書が届いていないのか、届いて申請していないのか。

この方法は、受け取った側の記憶に頼らず、漏れを外から拾えるのが強みです。営業の手元で転送が止まっている請求書も、ここで見つかります。そのかわり、その月だけの取引は一覧に載らないので、拾えません。

対策3:受け取りと申請を、一つの動作にする

いちばん根本的なのは、保存と申請を分けないことです。

請求書の受付用のアドレスに届いたPDFから、支払の申請の下書きが自動で作られる。そういう仕組みを使えば、受け取った時点で申請が始まります。保存して安心する、という隙間がなくなります。

そのかわり、システムの費用と導入の手間がかかります。取引先ごとの設定や、読み取りの誤りを直す作業も出てきます。

漏れたときの重さ

支払漏れは、取引先の信頼を損ないます。それだけではありません。

取適法の対象の取引なら、支払期日に遅れると年14.6%の遅延利息がかかります。旧下請法が改正され、2026年1月に施行された法律です。詳しくは支払業務の記事に書きました。

まずは、受付の件数を数えてみる

三つのうち、まず始めるのは対策1です。仕組みを変えずに、明日からできるからです。

次の月末に、受付に残った件数を数えてみます。0件にならない月が続くなら、対策3のシステムを考える時期だと判断します。