「これ、どう処理すればいいですか」
迷う会計処理が出てくると、つい監査法人にそう聞きたくなります。相手は会計の専門家です。答えを出してもらえれば、早くて安心です。
けれども、私が経理として守ってきた線があります。監査法人に頼りすぎない。処理は、会社が決める。
財務諸表を作るのは、会社の責任
監査報告書には、経営者の責任と監査人の責任が分けて書かれています。
経営者の責任は、会計の基準に沿って財務諸表を作り、適正に表示することです。監査人の責任は、その財務諸表について意見を表明することです。作るのは会社、確かめるのは監査法人。この役割は、はっきり分かれています。
監査法人が処理まで決めれば、自分で決めたものを自分で監査することになります。だから「どうすればいいですか」と聞いても、答えは慎重になりがちです。この点は、会計士と税理士の違いの記事にも書きました。
頼りすぎると、判断が社内に残らない
監査法人の言うとおりに処理を決めると、その場は早く片付きます。けれども、いくつか困ることが出てきます。
一つは、なぜその処理にしたのかが、社内に残らないことです。「監査法人がそう言ったから」は、理由になりません。翌期に同じ論点が出たとき、誰も説明できなくなります。
もう一つは、担当の会計士が替わったときです。前の担当者が口頭で言ったことは、引き継がれるとは限りません。新しい担当者に別の見解を示されたとき、会社の根拠がなければ押し返せません。
会社が先に決めて、確かめてもらう
だから、順番を逆にします。会社が先に決めて、その判断を監査法人に確かめてもらうのです。
まず、取引の事実をそろえます。契約の中身、金額、時期。次に、選べる処理と、その根拠になる基準の定めを並べます。そのうえで、会社としてどの処理をとるか、なぜそれを選ぶかを決めて、文書にします。
監査法人には、その文書を持って相談します。「この取引を、この理由で、こう処理したいと考えています。監査上の問題はありますか」。聞き方が変わると、返ってくる答えも具体的になります。
のれんの減損の記事で、監査法人との折り合いに悩んだ話を書きました。そのときも、計画の前提を示し、過去の実績との差を説明するのは会社の側でした。決めるのは会社で、監査法人はそれを確かめる。その線は、意見が分かれる場面でこそ大事になります。
頼らないことと、相談しないことは違う
ただ、頼りすぎないことは、相談しないこととは違います。
大きな取引や、判断の分かれそうな論点は、早めに伝えておきます。期末に初めて出すと、確かめる時間が足りません。意見の食い違いが残ったまま、締め切りを迎えます。
会社の結論は会社が出す。ただし、その結論を確かめてもらう時間は、十分に取っておく。それが、監査法人との付き合い方だと考えています。
次の期末も、会社の結論から出す
次の期末にも、迷う処理はきっと出てきます。
そのときも、まず会社としての結論と理由を文書にします。監査法人の前に出すのは、それからです。「どうすればいいですか」ではなく、「こう処理したい」から話を始めます。
