ニデックの監査法人は、なぜ二年続けて「意見不表明」としたのか。経理の求人に応募する人が確かめること

転職サイトを見ていると、ニデックの経理の求人をよく見かけます。

2026年9月30日、そのニデックの有価証券報告書が出ました。監査法人の意見は「意見不表明」でした。前期の2025年3月期に続いてです。

この求人に応募するのは、どんな人なのか。その前に、監査法人が何を理由に意見を出さなかったのかを読んでおきます。

意見不表明とは何か

監査報告書の意見には、いくつかの種類があります。ふつうは「適正」です。誤りが一部にとどまれば「限定付適正」、全体が誤っていれば「不適正」になります。

意見不表明は、そのどれでもありません。判断の材料となる監査証拠が足りず、適正かどうかを言えない、という意味です。しかも、その影響が決算書の一部ではなく、全体に及びうるときに出されます。

ニデックの監査法人は、PwC Japan有限責任監査法人です。今回、意見や結論を出さなかったのは三つです。有価証券報告書の監査、内部統制の監査、第3四半期決算短信のレビューです。

理由は、関与した人がまだ経理にいること

会社が公表した監査報告書の「意見不表明の根拠」は、三つの柱からなります。

柱 中身
コーポレート・ガバナンス 不適切な会計処理に関与した役職員の一部が、財務報告で責任ある立場に残っている
資産の減損 6,322億円の減損損失のうち、一部の金額と計上時期の見積りを裏付ける証拠が得られない
比較情報 前期の数字を直した修正再表示が、妥当で漏れがないか判断できない

いちばん重いのは、一つめです。

第三者委員会の調査では、不適切な会計処理が確認されました。売上の早期計上、引当金の過少計上、棚卸資産の過大計上などです。会計監査人への対応も問題にされています。誤解を招く情報を出す、資料を隠す、改ざんした記録を渡す、といったことです。

数字そのものは、直されています。それでも、関与した人がまだ財務報告を担っています。監査法人は、その人が出す資料と説明を信頼できないと判断しました。二つめと三つめの柱も、この不信が土台にあります。

組織の風土は、すぐには変わらない

数字は、調査が終われば直せます。人と仕組みは、そうはいきません。

関与した役職員への人事上の措置は、進められています。ただ、監査報告書によれば、一部は終わっていません。後任の人がきちんと務めているかも、十分には確かめられていない、とされています。

決算の数字を作る人が替わらなければ、監査法人は前と同じ目でその数字を見ます。風土を変えるとは、こういう地道な入れ替えの積み重ねなのだと思います。

会社は10月中に残った課題を解消し、監査意見の取得を目指すと報じられています。東証の特別注意銘柄の指定を外すための、内部管理体制確認書の提出も控えています。

求人に応募するのは、どんな人か

この状況で、経理の人を募集している。人の入れ替えを進めているのですから、自然なことです。

応募する人は、大きく分けて次のような人だと考えます。

応募する人 得られるもの 引き受けるもの
内部統制や決算の立て直しに関わりたい人 修正再表示や統制の作り直しという、めったにない経験 監査法人の厳しい目と、長い残業
大企業の連結決算を経験したい人 グローバル企業の連結の規模 立て直しの最中の混乱
事情をよく知らずに応募する人 大手の看板 入ってから知る現実

三つめの人には、なってほしくありません。応募するなら、この監査報告書を読んでからにしたいところです。

面接で確かめたいこと

応募するなら、面接で次の点を聞いてみる価値があります。

  • 配属先の上司や同僚に、人事上の措置の対象になった人はいるか
  • 監査法人とのやり取りは、誰がどの立場で担うのか
  • 経理が、事業部門や経営陣からの圧力に対して、どこまで独立した立場にあるか
  • 立て直しの期間に、どれくらいの残業を見込んでいるか

どれも聞きにくい質問です。それでも、答え方そのものが、その会社の今の風土を映します。

次の監査報告書を待つ

10月末までに、内部管理体制確認書が出る予定です。監査法人が、2026年3月期について意見を出し直すかも焦点になります。

次の監査報告書が出たら、意見がどう変わったかを読みます。あわせて、転職サイトの経理の求人がどれくらい残っているかも見てみます。