その質問は、監査法人の会計士に聞くことでしょうか。それとも顧問税理士でしょうか。
決算の時期になると、経理の机には両方の先生への質問がたまっていきます。どちらに聞いても、それらしい答えは返ってきます。だからこそ、聞く相手を取り違えても気づきにくい。
私も新人のころ、聞く相手を間違えました。資産の陳腐化に伴う税務上の要件を、監査法人の会計士に聞いたのです。二人の役割の違いが、よくわかっていませんでした。今思えば、あれは顧問税理士に持っていく質問です。
会計士と税理士の違いは、試験の難しさや年収で語られがちです。けれども経理にとって大事なのは、どの質問をどちらに持っていくかです。
法律が独占させているのは、一つの塊ずつ
「会計士は会計、税理士は税金」。おおむね正しい覚え方です。
しかし条文を読むと、線の引き方はもっとはっきりしています。
| 公認会計士 | 税理士 | |
|---|---|---|
| 独占している業務 | 財務書類の監査・証明 | 税務代理・税務書類の作成・税務相談 |
| 根拠の条文 | 公認会計士法 第2条第1項・第47条の2 | 税理士法 第2条・第52条 |
| ほかに引き受けられる仕事 | 財務書類の調製、財務の調査・立案・相談 | 税理士業務に付随する記帳代行や財務書類の作成 |
独占しているのは、会計士なら監査、税理士なら税務です。それ以外の会計の相談や記帳は、どちらにも頼めます。
質問の行き先は、答えが監査意見に関わるか、申告書に関わるかで決まります。
監査の会計士は「処理を決める人」ではない
監査法人の会計士は、会社が作った財務諸表が正しいかを確かめる立場です。処理まで自分で決めてしまえば、自分の決めたものを自分で監査することになります。だから「どう処理すればいいですか」と聞いても、答えは慎重になります。
聞き方を変えると、話は早く進みます。
私が心がけてきたのは、一般的な会計上の取扱いを尋ねないことです。個別の事例を具体的に挙げ、会社としてどう処理したいかという方向性を添えて聞く。「この取引を、こう処理したいと考えています。監査上の問題はありますか」という形です。
判断は経理が持ち、会計士にはその判断を確かめてもらう。一般論を聞けば、返ってくるのも一般論です。
一方で、申告書の数字や税務調査の立会いは、顧問税理士の領分です。
「この費用は損金になりますか」は、監査法人ではなく税理士に聞く質問です。
新人のころの私が持っていくべきだったのも、こちらでした。
税理士の仕事は、無報酬でも税理士の仕事
二つの法律を並べると、小さな違いに気づきます。
公認会計士法は、監査を「報酬を得て」行うことを会計士の独占にしています。税理士法の第2条にはこの言葉がありません。書かれているのは「他人の求めに応じ」だけです。
頼まれて税務書類を作る。税額の相談に乗る。
お金をもらわなくても、それは税理士業務に当たり得ます。
国税庁も、税理士でない者は「たとえ無償であっても」行えない、としています。条文にある「業とする」の意味は、税理士法基本通達2-1が定めています。繰り返し行うこと、または繰り返すつもりで行うことです。
経理をしていると、身近な人から確定申告を頼まれることがあります。善意でも、毎年のように引き受けていれば当てはまります。断る理由として、覚えておいて損はありません。
会計士は税理士にもなれる
税理士法第3条は、公認会計士に税理士となる資格を認めています。ただし同じ条の第3項で、税法に関する研修を修了していることが条件になっています。名刺に「公認会計士・税理士」と並ぶ先生がいるのは、このためです。
肩書きが二つあっても、その先生とどちらの立場で契約しているかは別の話です。
監査の担当として来ている先生に、税務の相談をそのまま持ち込めるとは限りません。
契約書の「業務の範囲」を一度読む
どちらに何を聞けるかは、資格の名前より契約で決まります。監査契約書と顧問契約書を並べて、「業務の範囲」の欄を一度読んでみてください。書かれていない仕事を頼んでいたことに、そこで気づくかもしれません。
