経理の自己研鑽に、新しく始まる「中小M&A資格」を選ぶ理由

資格や検定には、定期的に取り組むようにしています。

ねらいは、知識の幅を広げることです。仕事で毎日使う知識は、放っておいても深くなります。幅のほうは、自分で外に出ていかないと広がりません。

次に考えているのは、新しく始まる「中小M&A資格試験」です。中小企業庁が運営主体となる試験です。初回は、2027年の1月から2月ごろの予定です。

中小M&A資格試験とは

中小企業のM&Aを支援する人の、知識と倫理観を高めるための試験です。仲介会社とのトラブルが問題になったことを受けて、中小企業庁が制度を作っています。

2026年3月の中小企業庁の資料では、次のように想定されています。

項目 想定
運営主体 中小企業庁(実施は民間への委託)
試験科目 M&A実務、財務・税務、法務、倫理・行動規範の4科目
形式 CBT方式、120分、60問程度
合格基準 総得点の70〜80%程度。科目ごとの最低点も設ける
受験機会 立ち上げ期は年3回程度、一斉に実施
合格後 登録制度あり。定期的な講習の受講などが要件

合格しても、弁護士や税理士の独占業務ができるようになるわけではありません。資料にも、その点に注意するよう書かれています。

経理が受けてよい試験なのか

主な受験者として想定されているのは、M&Aの支援に関わる人です。仲介会社やFA、金融機関などです。

ただ、資料には続きがあります。事業会社で中小M&Aに携わる人などにも、受験を広く勧めるとされています。経理が受けても、場違いではありません。

経理は、M&Aの「後ろ」を見てきた

経理がM&Aに関わるのは、たいてい契約が終わった後です。

買った会社を連結に入れる。のれんを計上する。買収した会社の決算を、親会社の締めに合わせる。どれも、案件が決まってから経理に回ってくる仕事です。

その手前で何が起きていたのか。相手をどう探し、どう価値を見積もり、契約で何を決めたのか。経理は、結果を受け取る側にいることが多いのです。

この試験の科目は、まさにその手前です。

なじみのある科目は、2割ほど

資料には、科目ごとの出題割合の想定も載っています。

科目 出題割合 60問なら
M&A実務 35〜40%程度 21〜24問
財務・税務 20〜23%程度 12〜14問
法務 17〜18%程度 10〜11問
倫理・行動規範 25%程度 15問程度

経理になじみがあるのは、財務・税務の2割ほどです。残りの8割は、M&Aの実務、法務、倫理です。法務には、民法や会社法、株式譲渡契約が入ります。

しかも、立ち上げ期は科目の免除を設けない方針です。公認会計士や税理士でも、4科目すべてを受けます。経理だからといって、近道はありません。

幅を広げるための試験として、この配分はちょうどよいと考えています。知っている2割で足場を作り、知らない8割を学ぶことになるからです。

合格した後に残る問い

この資格には、合格者の登録制度が付く予定です。要件は、倫理規程を守ることへの同意と、講習の受講です。講習は、1〜2年ごとなどの想定です。

仲介やFAの仕事をする人にとっては、登録に意味があります。氏名がデータベースで公表され、資格を持つ人として示せるからです。

では、事業会社の経理が、講習を受け続けてまで登録を続ける意味はあるのか。試験で幅を広げるだけなら、合格で目的は果たせます。そこから先を続けるかどうかは、まだ答えが出ていません。