「AIが仕訳を切るなら、会計ソフトはどれでも同じでしょう」
最近、そんな声を聞くようになりました。クラウド会計の2強、マネーフォワードとfreeeの話をしているときです。
私の考えは少し違います。自社の会計システムが何であっても、経理はこの2社の動きを見ておいたほうがよい。その理由を書きます。
もともとの思想が違う
2社は、同じクラウド会計でも、出発点が違います。
freeeは、簿記の知識がなくても使えることを目指してきました。入力の単位は「取引」です。いつ、誰と、何に、いくら払ったか。それを入れれば、仕訳は裏で作られます。会計、人事労務、請求書などを、一つの仕組みにまとめる方向です。
マネーフォワードは、会計の知識がある人が速く処理できることに寄せてきました。入力の単位は、なじみのある仕訳です。銀行やカードの明細を取り込んで、仕訳の候補を出します。サービスを領域ごとに分けて、組み合わせて使う作りです。
一般に、freeeは経理の経験が浅い人に向く、と言われます。マネーフォワードは、経理の経験がある人に向く、と。
AIエージェントで、差は縮まるのか
その2社が、いまAIで競っています。
2026年4月、マネーフォワードは「AI Cowork」を発表しました。バックオフィスの業務を担うAIエージェントです。自然な言葉で指示すると、複数のAIが連携して作業を進めるとしています。AIが作った下書きを、人が確認して承認する仕組みも用意するとしています。
freeeは2026年6月、「freee AIアシスタント」の提供を始めました。各製品に組み込まれています。こちらも、自然な言葉の指示で使えるとしています。
AIが入力も仕訳も引き受けるなら、入力の単位の違いは表から見えにくくなります。「どちらでもよい」という声は、ここから出てきます。
それでも、2社を見ておく理由
自社が別のシステムを使っていても、2社の動きは経理の仕事に響いてきます。
一つめは、取引先や子会社が使っていることです。小さな子会社や取引先、個人事業主の多くが、どちらかを使っています。請求書やデータを受け取る側として、相手の道具を知っておくと話が早くなります。
二つめは、機能の向かう先が見えることです。インボイスや電子帳簿保存法のような制度の改正に、2社は早く製品で応えてきました。ほかの会計システムも、追いかけることが多いと感じます。
三つめは、AIが経理の何を引き受けるのかが見えることです。2社のAIエージェントが、どの作業を自動にして、どこで人の承認を求めるのか。それは、経理の仕事のどこが残るかの見取り図になります。
思想の違いは、AIの後ろに残るのか
AIが仕訳を切るようになっても、その裏の違いは残ります。取引を単位に考えるか、仕訳を単位に考えるかです。
AIが間違えたとき、人が直すのはどちらの単位なのか。承認する人に、簿記の知識はどこまで要るのか。2社の思想の違いは、AIの時代にこそ表に出てくるのかもしれません。経理に何を求めるかの違いとして。
