為替差損益の仕訳は、仕組みだけ見れば単純です。
取引の日のレートで記録し、期末に決算日のレートで換算し直す。差額を為替差損益にする。それだけです。けれども、実務では取り違えやすいところが、いくつかあります。
換算し直すのは、金銭債権債務だけ
期末に決算日のレートで換算し直すものは、決まっています。外国通貨、外貨建金銭債権債務、外貨建有価証券、デリバティブなどです。外貨建取引等会計処理基準の一2(1)の定めです。
外貨建金銭債権債務は、契約上の金額が外貨で表示された債権債務です(注4)。売掛金、買掛金、貸付金、借入金がこれに当たります。
取り違えやすいのが、前渡金と前受金です。外貨で払った前渡金は、外貨建取引ではあります(同注1)。けれども、お金を受け取る権利ではなく、物やサービスを受け取る権利です。金銭債権ではないので、期末に換算し直しません。払った日のレートのまま残ります。
外貨建の残高を科目を問わず洗い直すと、前渡金や前受金まで換算してしまいます。換算する科目を、先に決めておくことが大事です。
TTM・TTS・TTBの違い
銀行が毎営業日に公表する為替レートには、三つあります。
| 略称 | 呼び名 | 意味 |
|---|---|---|
| TTS | 電信売相場 | 銀行が客に外貨を売るレート。円を外貨に替えるときに使われる |
| TTB | 電信買相場 | 銀行が客から外貨を買うレート。外貨を円に替えるときに使われる |
| TTM | 仲値 | TTSとTTBの真ん中 |
例として、2026年10月16日に三菱UFJ銀行が公表した米ドルを見ます。TTSは159.19円、TTBは157.19円でした。TTMは、その真ん中の158.19円です。米ドルなら、TTMの上下に1円ずつの幅があります。
この幅は、通貨によって違います。同じ日のユーロは上下1.5円、イギリスポンドは上下4円でした。売る側か買う側かで、同じ日でも円換算の額が変わります。
レートは、先に決めて、変えない
会計でどれを使うべきかは、基準に書かれていません。使うレートには、選べる幅があります。
取引の日のレートは、当日の直物のほか、前月の平均や前月末も使えます(注2)。決算日のレートも、決算日の直物のほか、前後の平均を使えます(注8)。
選べるということは、決めておかないとぶれるということです。TTMを使うのか、TTSやTTBを使い分けるのか。当日か、前月の平均か。社内で先に定め、毎期同じものを使います。
子会社があるなら、グループでもそろえます。そろっていないと、グループ会社間の照合で差が出ます。この差については、グループ会社間の取引が合わないときの記事にも書きました。
決済のときの差額も、為替差損益
期末の換算だけでなく、決済のときにも差額が出ます。
売掛金を取引の日のレートで記録し、入金の日のレートで受け取る。その差も為替差損益です(基準 一3)。期末に換算し直した債権なら、期末のレートと入金の日のレートの差になります。
期末の換算差額と、決済の差額。どちらも同じ為替差損益に入ります。中身を分けて説明できるようにしておくと、分析で困りません。
次は、子会社の決算書を円に直す話
何を換算し直すのか。TTM・TTS・TTBのどれを、どの日の分で使うのか。この二つを先に決めておけば、為替差損益の取り違えの多くは防げます。
ここまでは、自社の外貨建取引の話でした。連結決算では、もう一つ、海外の子会社の決算書そのものを円に直す作業があります。そこで出る差額は、為替差損益ではなく、別の場所に載ります。次は、その話を書くつもりです。
