決算日から1年。
継続企業の前提を評価するとき、これまで見てきた期間です。この「1年」が、延びようとしています。
2026年10月23日、企業会計基準委員会(ASBJ)が公開草案を公表しました。企業会計基準公開草案第100号「継続企業に関する会計基準(案)」です。適用指針の案と、後発事象に関する会計基準の改正案もあわせて出ています。コメントの期限は、2026年12月25日です。
正直なところ、継続企業の前提を自分の仕事で意識したことは、一度もありません。上場企業でこれを意識しなければならない会社は、相当危ない状態です。働く会社を選ぶとき、継続企業の前提に疑義があるような会社は選ばないでしょう。
それでも、この公開草案は読んでおく価値があります。疑義のない会社にも関わる変更が入っているからです。
監査の実務指針から、会計基準へ
継続企業の前提の注記は、これまで公認会計士協会の報告第74号に沿っていました。「継続企業の前提に関する開示について」という、監査の側の文書です。
公開草案は、報告第74号の会計に関するところを切り分け、会計基準に移すものです。会計のルールが監査の文書に散らばり、全体をつかみにくい。その課題に応える移管の一つです。ASBJは、実質的な中身を変えることは意図していない、としています。
ただし、変わるところもあります。大きなものは三つです。
変わること1:評価の期間が延びる
一つめは、継続企業として存続できるかを評価する期間です。
| 期間 | |
|---|---|
| 報告第74号 | 少なくとも貸借対照表日の翌日から1年間 |
| 公開草案 | 決算日後、少なくとも財務諸表の公表の承認日後1年を経過した日まで |
3月決算の会社で考えてみます。これまでは、翌年の3月末までを見れば足りました。公開草案では、財務諸表の公表の承認日から1年後までを見ます。承認日が5月なら、その翌年の5月までです。評価の期間が、2か月ほど先まで延びます。
背景には、国際監査基準ISA 570の2024年の改訂があります。経営者の評価期間を、財務諸表の承認日から12か月以上にするよう求めるものです。日本でも監査基準の改訂が議論されています。会計基準の側も、それにそろえる趣旨です。
変わること2:前提を置く判断の基準が書かれる
二つめは、継続企業を前提にしてよいかの判断の基準です。
公開草案は、次のように定めます。清算や営業停止の意図がある場合、またはほかに現実的な代替案がない場合。それ以外は、継続企業を前提として財務諸表を作成する。
監査の実務で判断の基準として使われてきた考え方で、IFRSの定めとも同じです。それを会計基準に書き込みます。
変わること3:決算日後の不確実性は、継続企業の注記に
三つめは、注記の置き場所です。
決算日のあと、財務諸表の公表の承認日までに、重要な不確実性が出てきた場合です。これまでは、重要な後発事象の注記として書いていました。公開草案では、継続企業の前提に関する注記として書きます。
あわせて、書く事項が一つ加わります。継続企業を前提に作っていて、その不確実性の影響を財務諸表に反映していない旨です。
適用は、2028年3月期から
適用は、2028年3月31日以後に終わる年度の年度末からとする案です。監査基準の改訂と、時期を合わせるためです。
経理の目で見ると、気になるのは変わること1です。
公開草案は、存続できるかの評価そのものを、すべての会社に求めています(第5項)。疑義のある会社だけではありません。意識しない会社でも、「問題ない」と言える根拠を少し先まで用意しておきます。
評価の期間が延びれば、資金繰りの見通しも、その日まで描いておく必要があります。ところが、多くの会社の予算は、翌期の末までしか作っていません。3月決算なら、翌年の4月や5月の資金の動きは、予算の外にあります。前提に疑義がある会社ほど、この数か月の見通しを根拠つきで示すことになりそうです。
後発事象の改正案も読む
今回は、継続企業の会計基準案を中心に読みました。
同時に出た後発事象の改正案で、「財務諸表の公表の承認日」が定義されます。評価の期間の終わりを決める、大事な日付です。次は、この後発事象の改正案のほうを読んでみるつもりです。
