後発事象は、決算日のあと、いつまでの出来事を拾うのか。
その終わりの日付が、「財務諸表の公表の承認日」です。2026年10月23日に出た改正案は、この日付を用語としてはっきり定義します。
継続企業の公開草案の記事の最後で、次はこの改正案を読むと書きました。同じ日付が、継続企業の前提を評価する期間の起点にもなるからです。
私が後発事象でよく向き合ってきたのは、決算日後のM&Aです。決算日のあとに、会社の買収を決めたり、契約を結んだりする。そのたびに、注記するかどうかを検討します。ただ、重要性を考えて、注記しないことのほうが多いのが実際のところです。
どの出来事を、いつまで検討するのか。その終わりの日付が、これから会計基準の言葉で決まります。
2026年1月に、後発事象の会計基準ができた
順番に見ていきます。
後発事象のルールも、これまで日本公認会計士協会の監査の文書に置かれていました。2026年1月9日、企業会計基準委員会(ASBJ)が、会計基準に移しました。企業会計基準第41号「後発事象に関する会計基準」と、適用指針第35号です。
このとき、拾う期間の終わりが「財務諸表の公表の承認日」と定められました。適用は、2027年4月1日以後に始まる連結会計年度・事業年度の期首からです。3月決算の会社なら、2028年3月期からになります。
改正案は、承認日を用語として定義する
ただ、1月の基準では、承認日の中身は結論の背景で説明されているだけでした。
10月の改正案(公開草案第101号)は、これを本文の「用語の定義」に移します。
「財務諸表の公表の承認日」とは、財務諸表を構成するすべての計算書(関連する注記を含む。)を作成した上で、財務諸表を公表することを承認する権限を有する社内の機関又は個人が当該財務諸表の公表を承認した日付をいう。
ポイントは二つです。注記まで含めて、すべての計算書を作り終えていること。そのうえで、承認する権限を持つ社内の機関か個人が、承認した日であることです。
なぜ、いま定義するのか
理由は、監査の側の動きです。
2026年7月、公認会計士協会が監査基準報告書560の改正案を出しました。同じ日付を定義し、注記を含む財務諸表が作成されていることを条件に入れています。会計基準と監査基準で言葉がずれていると、実務が混乱します。だから会計基準の側も、本文の定義に格上げしてそろえる、という説明です。
継続企業の公開草案も、評価の期間を「承認日後1年を経過した日まで」としています。承認日がいつかで、継続企業の評価の期間の終わりも決まります。
誰が承認するかは、会社ごとに違う
経理として決めておきたいのは、自社の承認日です。
承認する権限を持つのが誰かは、会社の経営とガバナンスの構造で決まります。改正案は、会社ごとに違いうる、としています。取締役会なのか、経営会議なのか、社長なのか。基準は一つに決めていません。
もう一つ、会社法の計算書類との関係もあります。適用指針の改正案は、会計監査人を置く会社の扱いを定めています。計算書類を確定させた日(確認日)から承認日までの、修正後発事象の扱いです。これは修正後発事象とせず、開示後発事象に準じて扱います。計算書類と、金融商品取引法の財務諸表とで、日付が二つ並ぶことになります。
承認日を、取締役会の日にするのか
それでも、決めきれない問いが残ります。
自社の承認日を、取締役会の日に置くのか、それより前の経営会議の日に置くのか。後ろに置けば、拾う後発事象の期間が延びます。前に置けば、継続企業の評価の期間が早く始まります。どの日を承認日とするのが、自社の決算の流れにいちばん合うのでしょうか。
