ソニーや大塚家具の財務諸表から分かることとは?(前川修満「会計士は見た!」)
企業の財務諸表を読み解く方法
企業の財務諸表からどういうことが読み取れるのかについて、実際に有名企業の財務諸表を取り挙げて説明している本があります。
普段、企業の中で財務諸表を作る立場にいる私にとって、とても面白いと感じた本でしたのでご紹介します。
有名企業の財務諸表から読み取れること
書籍は全部で6章で構成されていますが、私がおすすめするのは第1章から第4章までです。
ここはぜひ読んでほしいと思います。
ソニーはどこへ向かっているのか
第1章は、ソニーです。
最近のソニーの凋落ぶりは誰もが感じているところだと思いますが、金融事業に軸足を移していることはあまり知られていないでしょう。
でも、実際に有価証券報告書を見ると、はっきりと数字に表れていることが分かります。
ソニーの事例からは有価証券報告書に記載されているセグメント利益に注目しましょうということを教えてくれます。
大塚家具の創業者の経営姿勢
第2章は、大塚家具です。
親子騒動はワイドショーでたびたび取り上げられていたので騒動の概要は知っていたとしても、父親がどのような経営成績を残してきたのかまでは知らない人がほとんどでしょう。
実は、とても堅実な経営をしてきたことが決算書からわかるのです。
これを見てしまうと、父親に対する見方が変わってしまうほどです。頭が固いだけではなかったのです。
コジマがとったコスト削減手法
第3章は、コジマです。
コジマの事例では、コスト削減の手法によっては、社員の士気を簡単に上げることも下げることもできることを教えてくれます。
財務諸表からそんなことさえも読み取れるのは、まさに驚きです。
キーエンスの高額年収の秘密
第4章は、キーエンスです。
キーエンスの場合、優良企業ということは財務諸表からわかるのですが、その秘密のすべては読み取れません。
ある種、財務諸表から読み取れることの限界を教えてくれます。
しかし、その限界は乗り越えることができます。
会社のビジネスモデルを理解したうえで財務諸表を読み込むことで見えるものがあるのです。
この事例からは、そのような教訓を教えてくれます。
有価証券報告書を読んでみる
本書を読んでいると、実際に自分でも気になっている有名企業の有価証券報告書(有報)をダウンロードして詳細に読み込んでみたくなってしまいます。
これはまさに、人を動かす力がある良書の特徴です。
一方で、本書に書かれているのは流行り廃りのある企業の一時期のトピックスでもあります。
繰り返し読む必要はなく、そのエッセンスがつかめれば読んだ甲斐があったといえるでしょう。
書籍のタイトルの重要性
これは内容とは関係ないのですが、本書はそのタイトルで損をしているのではないでしょうか。
タイトル「会計士は見た!」は、おそらく「家政婦は見た!」をもじっているのだと思いますが、書籍を読み終わってみると、そのタイトル付けが残念に思えてなりませんでした。
だって、家政婦のように家の中に入って直接その目で見てきたわけではないのですからね。
正直言って、著者が会計士(企業を監査する側)である必然性も感じませんでした。経理マンでも、会計学者でもよかったかもしれません。
本書は、著者自身が持っている視点や考え方が興味深いと思っています。その意味でも、なぜこのタイトル?と思わずにはいられませんでした。