経理の転職事情: 大手企業から中小企業へ、そしてその逆

経理の転職事情: 大手企業から中小企業へ、そしてその逆

経理職の転職事情は、近年変化の激しいものとなっています。特に、大手企業から中小企業への転職、中小企業から大手企業への転職は、それぞれに異なるチャレンジとメリットが存在します。この記事では、実際のエピソードを交えながら、経理職の転職における双方の選択肢について解説していきます。

大手企業から中小企業へ:裁量権の広がり

大手企業に長年勤めていたAさんは、経理部門の一員として、専門分野に特化した業務を行っていました。日々の業務は明確に分担されており、上司や他部門とのやり取りもスムーズでしたが、次第に「自分の仕事が会社全体にどのように貢献しているのか」を感じづらくなったと言います。

そんな折、Aさんは中小企業への転職を決断しました。転職理由は、より幅広い業務を経験したいという思いでした。実際に中小企業に転職すると、予想以上に業務範囲が広がり、会計だけでなく、税務、財務、さらには経営企画にも携わることができたのです。Aさんは「会社全体の動きを把握しながら、自分の仕事が直接的に経営に影響を与える実感が持てるようになった」と感じています。

しかし、その反面、Aさんは「大手企業で感じるような整備されたシステムやサポートが少なく、自己解決力が求められる場面が多い」とも語っています。大手企業では、特定の分野に強みを持つ人がサポートを提供してくれることが多いのに対し、中小企業では、一人ひとりの業務範囲が広いため、自分で調べて対応することが増えたそうです。このように、自由度が増す一方で、責任も増加することが大きな特徴となっています。

中小企業から大手企業へ:専門性の高まり

一方で、中小企業から大手企業へ転職したBさんの体験も興味深いものです。Bさんは、少人数の会社で経理全般を担当していました。業務は多岐にわたり、会計ソフトの入力から決算、さらには経営者との密なやり取りまでこなしていました。しかし、次第に「専門的なスキルをもっと深めたい」という思いが強くなり、大手企業へ転職することを決意しました。

大手企業に転職した後、Bさんは「驚くほど業務が分業化されている」と感じました。自分の担当業務はより深く掘り下げることが求められ、特定の分野においてエキスパートになる機会が増えたのです。

例えば、税務部門では複雑な税制の知識が求められ、決算処理では高い精度の分析が要求されました。Bさんは「同僚も非常に高い専門知識を持っており、常に刺激を受ける環境に身を置くことができる」と話しています。

ただし、Bさんは「業務の一部しか担当できないため、会社全体の流れが把握しにくい」というデメリットも感じているようです。中小企業時代は、会社のあらゆる部門と連携して業務を進めていたため、経営者目線で物事を考えることができましたが、大手企業では自分の業務に集中するため、全体像が見えにくくなることが少なくありません。

それぞれのメリットとデメリット

大手企業と中小企業のどちらに転職するにせよ、それぞれにメリットとデメリットが存在します。大手企業では、専門性を高めることができ、整備された環境で安定した働き方が実現できます。一方で、中小企業では、幅広い業務を経験できるため、経理職としての総合的なスキルが身につく機会が多いです。

例えば、Aさんのように「自分のスキルを幅広く活かしたい」と考える人にとっては、中小企業での仕事は非常に魅力的です。反対に、Bさんのように「特定の分野でスペシャリストを目指したい」という場合は、大手企業での経験が大いに役立つでしょう。

転職のタイミングと考慮すべきポイント

転職を考える際には、単に会社の規模だけで判断するのではなく、自分のキャリアプランや働き方の希望を明確にすることが重要です。また、会社の文化や業務プロセス、サポート体制なども転職の決め手となる要素です。AさんもBさんも、それぞれの転職で得たものは異なりますが、共通して言えるのは「自分が成長できる環境を選ぶことが大切」という点です。

最後に、転職を成功させるためには、事前にしっかりと情報収集を行い、業務内容や社風を理解しておくことが重要です。経理職は企業の重要な役割を担うポジションであり、その選択が企業全体に大きな影響を与えることを忘れずに、自分にとって最適な道を選びましょう。