USCPA試験はどれだけ難しいのか?(合格体験記)



2020年 追記

Kindle本として出版しました。
米国公認会計士 USCPAは必要ない

はじめに

2013年5月から勉強を開始して、1年6ヶ月後の2014年11月に米国公認会計士試験の全4科目合格を達成しました。受験経緯や学習内容を記録しておきたいと思い、このページを作りました。これを書いたはすべて合格後になります。

USCPA(米国公認会計士)を目指した理由

ご存じのとおり、USCPAは、United States Certified Public Accountant の頭文字です。つまり、アメリカにおける公認会計士です。通常はCPAとだけ言いますが、日本にも公認会計士(JCPA)の資格がありますので、区別する意味で日本ではUSCPAと呼んでいます。

同じ会計士の資格とは言いつつも、日本人でこのUSCPAを取ることは、JCPAを取ることとは、目的がまったく違うと言っていいのではないでしょうか。

私が目指した理由には、前向きな理由と後ろ向きな理由がありました。前向きな理由は、「これからはやっぱり海外や!グローバルに活躍するために必要や!」というもの。後ろ向きな理由は、そのときの仕事(経理には変わりませんが、経理でもいろんな分野がありますからね)からできるだけ早く離れたかったというもの。当然ながら、JCPAのように監査業務をやりたいとは思ってはいませんでした。なぜなら、監査を受ける側として彼らの大変な働き方を知っていたからです。

ちなみに、受験開始時の私のスペックは、日商簿記1級・TOEIC800点台・経理実務10年です。いま振り返ってみて、この試験を受験する土台としては、ちょうどよい感じだったのかと思います。

USCPA受験予備校・学習教材

受験予備校

予備校は費用の観点から選びました。(こう書くと、どこかはすぐ分かると思います。一番安いところです。)

というのも、最初は独学で受験しようと考えていたところ、受験資格を満たすには、私の大学で取得した単位数では足りず、追加で単位を取得しないといけないことが分かりました。しかし、予備校に所属しないで単位を取ることは難しいということが判明したのです。

なぜなら、どこの予備校も、アメリカの大学と提携しており、予備校に入学しないと単位の取得ができないようになっているからです。ですので、私は単位が取得できさえすればよいので、価格のみを予備校選びの判断基準としました。

ただし、そのような考えで選んでしまったので、途中でやはり、予備校選びに「失敗したかな」とは思ったのも事実です。

でも、その時点ではもう引き返せませんし、現実としてその予備校だけで合格している人がたくさんいるようでしたので、あとは自分の努力次第だと思いこませて勉強に専念しました。

学習教材

基本は予備校から配布されたテキスト・問題集です。問題はWEB上で解く形式になっていました。

また、副教材として以下のものも購入し、使用しました。Wiley社のテキストを選んだのは、AmazonのKindleで購入できたからです。ページ数が多いので、問題部分だけを印刷するなど、工夫して使用しました。(なお、Kindle版の書籍はそのまま印刷できない仕様になっているので、けっこう大変でした。)

Wiley 全科目 4冊

USCPA集中講義 4冊

USCPA受験費用

費用面は、このUSCPA試験を受ける上で考えておくべき重要なポイントです。誰しもストレートでの合格を目指すと思いますが、やはり試験は水物です。余裕を持った予算を立てることをおすすめします。

いま思うと、この試験は経済的な余裕がないとほんと厳しい試験だと感じます。

また、為替レートの影響もありますので、その点も注意が必要です。私の場合、一番最初の出願時に100円/USDだったものが、最終受験時には109円/USDと円安に進んでしまったため、負担が増えました。

以下が私が費やした概算額です。

予備校   302千円
副教材    30千円
単位取得等 112千円※USD決済
受験料等  386千円※USD決済(受験6回分)
================
合計    830千円

USCPA試験学習

学習スタイル・学習時間

仕事をしながらの受験でしたので、基本は平日の朝と夜、休日でした。ただ、平日の朝はなかなか時間が取れませんでした。また、休日は家族サービスがありますので、メインは平日の夜にしていました。

会社帰りにスタバに寄って、2時間から3時間(だいたい夜20時から23時くらいまで)やるというスタイルを続けました。これで、およそ1週間あたり13時間。試験前の1ヶ月間は、休日も時間をとって、1週間あたり10時間をプラスするようにしました。

ちなみに、本番の試験日は、必ず「月曜日の午後」を指定していました。月曜日は有給休暇をとることで、前日の日曜日から、試験会場に近いビジネスホテルに泊まりこんで準備をしていました。

厳密に記録していたわけではないのですが、以下のような計算で概算1,200時間になりました。結果的には、予備校などで示されている目安1000-1500時間を証明した形です。

78週間(1年6ヶ月)×13時間=1,014時間
24週間(試験前1ヶ月×試験回数6回)×10時間=240時間
==================
合計1,254時間≒1,200時間

1) FAR Financial Accounting and Reporting

おそらくほとんどの人が始めに勉強する「財務会計」です。簿記1級まで持っていたこともあり、英文会計用語さえ憶えてしまえば大丈夫でした。政府会計は、日本の簿記ではやらないので、逆に楽しめました。

Module 9: Basic Theory and Financial Reporting
Module 10: Inventory
Module 11: Fixed Assets
Module 12: Monetary Current Assets and Current Liabilities
Module 13: Present Value
Module 14: Deferred Taxes
Module 15: Stockholders’ Equity
Module 16: Investments
Module 17: Statement of Cash Flows
Module 18: Business Combinations and Consolidations
Module 19: Derivative Instruments and Hedging Activities
Module 20: Miscellaneous
Module 21: Governmental (State and Local) Accounting
Module 22: Not-for-Profit Accounting

2) AUD Auditing and Attestation

監査は会計士の本業ですので、ある意味この内容はよく知っていないと資格をとってから恥ずかしい思いをするという覚悟で臨みました。監査を受ける経験をしてきましたので、理解は早かったです。

Module 1: Professional Responsibilities
Module 2: Engagement Planning, Obtaining an Understanding of the Client and Assessing Risks
Module 3: Understanding Internal Control and Assessing Control Risk
Module 4: Responding to Risk Assessment: Evidence Accumulation and Evaluation
Module 5: Reporting
Module 6: Accounting and Review Services
Module 7: Audit Sampling
Module 8: Auditing with Technology

3) BEC  Business Environment and Concepts

大学時代は経済学部だったこともあり、経済学は馴染みがありました。ライティングも心配したほどではなく、作文パターンを憶えて対応できました。

Module 40: Corporate Governance, Internal Control, and Enterprise Risk Management
Module 41: Information Technology
Module 42: Economics, Strategy, and Globalization
Module 43: Financial Risk Management and Capital Budgeting
Module 44: Financial Management
Module 45: Performance Measures
Module 46: Cost Measurement
Module 47: Planning, Control, and Analysis

4) REG Regulation

学習の範囲が広く、理解に時間を要する科目でした。自分では理解したはずなのに、いざ問題をやってみると、知識があやふやだったりすることが多い科目でもありました。

Professional Responsibilities and Business Law
Module 23: Professional and Legal Responsibilities
Module 24: Federal Securities Acts
Module 25: Business Structure
Module 26: Contracts
Module 27: Sales
Module 28: Commercial Paper
Module 29: Secured Transactions
Module 30: Bankruptcy
Module 31: Debtor-Creditor Relationships
Module 32: Agency
Module 33: Regulation of Business Employment, Environment, and
Module 34: Property

Federal Taxation
Module 35: Individual Taxation
Module 36: Transactions in Property
Module 37: Partnership Taxation
Module 38: Corporate Taxation
Module 39: Other Taxation Topics

 USCPA合格後

ライセンス

晴れて4科目に合格すると、ライセンスまで取得するかという問題がでてきます。私の場合、受験開始時からライセンスなんて必要ないと思っていましたが、合格したとたんに気になって各予備校のホームページを調べたりしてしまいました。

直接、予備校に説明を受けに行ったことで、最終的には「今すぐ焦って取る必要はない」という結論に至りました。

理由としては、「ライセンスをとるメリット」が「ライセンスをとるコスト」を下回っていると判断したからです。私にとってのメリットは、「名刺にUSCPAと書ける」程度のものです。

一方で、コストは約20万円かかります。このコストは追加単位取得などの初期費用で、ライセンスをとってしまった場合、更新料も必要となります。

転職

一般事業会社の経理にいる場合、この資格を取得したからといって特別なことができるわけではありません。海外に進出している企業であれば、国際事業部などに異動ができる可能性が高まるかもしれません。

転職市場においては一定の評価がされると聞いています。とくに外資系企業であれば、それなりの待遇が期待できるようです。伝聞形式で書いているのは、まだ自分が経験したわけではないからです。キャリアの棚卸しを含めて、これから転職エージェントに登録しようと考えています。

公認会計士・税理士・経理の転職求人情報なら【ジャスネットキャリア】

 あとがき

仕事をしながらの受験でしたので、やはり周りの協力なしには合格できなかったと思います。とても感謝しています。

追記

転職活動をしてみたところ、東証一部上場の有名企業から内定を頂きました。選考のステップは面接3回。海外を含めた子会社が増えている会社で連結決算チームの一員としてどうかというオファーでした。

とても迷った結果ですが、お断りしました。もちろん、直前まで実際にそこで働きたいと思って、面接にも臨んできました。しかし、実際に内定が出されると、いろいろ考えてしまうものです。



関連記事

USCPA試験は2017年4月からどう変わるのか?(米国公認会計士試験)