日本企業では女性を活かすことはできないのか?(村上由美子「武器としての人口減社会」)
保育園落ちた日本死ね!!!
2016年上半期に、「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログの発言が注目されました。
メディアや政府にまで取り上げられましたが、その後、保育園の整備は進んでいるのでしょうか。
このような発言がでてくるほど、女性の社会的進出に対する環境は厳しいということです。
でも、この問題を解決することは難しそうです。昨日読んだ本でそう確信しました。
エリートの考え方
読んだのは、村上由美子さんの「武器としての人口減社会」という本です。
著者は、スタンフォード大学卒業、ハーバード大学MBAという学歴を持ち、国連やゴールドマンサックス証券で働いた後、現在はOECD東京センター長を務める女性です。
この経歴から文句の付けどころがないエリートであることがわかります。
学者ではない、実務畑のエリートがどのような考えを持っているかに興味を持ったのが本書を読むきっかけでした。
女性は日本社会の “Best Kept Secret"
著者がこの本の中で一番ページ数を割いているのが、「女性は日本社会の “Best Kept Secret" 」という章です。
この章の冒頭で、国際機関に勤める彼女ならではの数字を見せてくれます。
国際比較統計の数字です。この数字はあまり知られていないのはないでしょうか。私は驚いてしまいました。
なんと日本人女性は、調査対象国の中で、「読解力」と「数的思考力」がトップに位置しているのです。
女性の能力の活かし方
本章では、このような素晴らしい女性の能力が生かされていない理由と、著者が考える処方箋が書かれています。
しかし、その内容に目新しさを感じませんでした。
私はこの分野に詳しいわけではありませんが、これまでもたくさん論じられてきたレベルと大差はないと思われます。
一方で、過去に多くの人々が示していることと同じ考え方をしているということは、それだけ本当に日本が危機的状況にあるということを強く印象づけます。
実行されない施策
と同時に、現時点では、これまで考えられてきた施策は実行されていないという証左でもあります。
著者を含めてこれまで活躍してきた女性たちは、海外で働いたり、外資系企業で働き続けられる能力があり、問題点を適切に把握し、よりよい解決策を示してきました。
でも、できることは提示するところまでなのです。
旧態依然とした日本企業
実際に解決策として取り組んでいかなければいけないのは、旧態依然とした日本企業にいる(あまり優秀でない)男性たちだからです。
日本人男性は、日本人女性がOECDの統計が示すように優秀であるとは考えていません。
そういう事情を考慮すると、解決することがいかに大変であることが理解できるはずです。
だからこそ、数十年も改善されてこなかったのでしょう。
新たなヒント
本書で著者は図らずもヒントを示したのではないかとも感じました。
本書の中心となる第3章のタイトルである“Best Kept Secret"(隠し球)という単語ですが、日本人女性をこのように表現したのは、彼女が働いていた外資系企業での男性上司だったようです。
彼は日本企業が女性の能力を生かし切れていないことを知っているのです。
これからの活路はどこにあるか
これは逆の面からみると、彼らであれば、女性を生かすことができるということです。
日本では、大企業では最近でこそ女性の活用が進んでいるようですが、日本企業の9割を占める中小企業では変わっていません。
大きな声で叫んでも、すぐに変わることはないでしょう。
外資系企業や、過去のしがらみがないスタートアップ企業にこそ、活路を見出すべきではないのでしょうか。