家賃は月1万5,000円。
伊藤忠商事が2018年に開いた社員寮の、当時の報道で目を引いた数字です。駅から徒歩3分、1人18平方メートルほどの部屋で、この家賃でした。
経理の目で見ると、この安さには税金の論点があります。寮の特徴とあわせて書きます。
日吉駅から徒歩3分の独身寮
寮ができたのは2018年3月です。場所は横浜市港北区箕輪町で、最寄りは東急東横線の日吉駅です。
7階建てで、部屋数は361戸。当時の報道では、すでに約250人が住んでいました。これまでの借り上げマンションの寮から移った人と、2018年の新入社員です。
独身の男性社員向けで、原則として新入社員を入れる方針でした。入れるのは入社4年目までです。
寮の三つの特徴
一つめは、部屋の中で暮らしが完結することです。約18平方メートルの部屋に、トイレ、シャワー、小さな台所と冷蔵庫があります。ビジネスホテルに近い作りです。
二つめは、寮長です。会社のOBが2人、交代で務めていました。若い社員にとっては、会社をよく知る先輩が身近にいることになります。
三つめは、夕食です。管理栄養士が考えた献立が、約400円で食べられました。
寮を作った目的は、「ひとつ屋根の下」で一体感を高めることだと説明されていました。
安く貸すと、差額は給与になるのか
経理の目で見ると、気になるのは家賃の安さです。
社宅や寮を安く貸すと、本来の家賃との差額が、社員の給与として課税されえます。基準になるのは「賃貸料相当額」です。建物と敷地の固定資産税の課税標準額と、建物の床面積から計算します。
受け取る家賃が賃貸料相当額の50%以上なら、差額は給与として課税されません。国税庁のタックスアンサー No.2597 の説明です。逆に50%を下回れば、差額の全部が給与になります。
1万5,000円という家賃が、賃貸料相当額の半分を超えているか。寮を運営する会社の経理は、固定資産税の課税標準額を確かめて、計算しておきます。会社が借りた建物を寮にする場合も、同じ計算をします。
寮と家賃補助では、税金が違う
2018年に記事を書いたとき、気になったことがあります。この寮に入れない新入社員にも、同じくらいの家賃補助があるのか、という点です。
税金の面では、ここに大きな違いがあります。寮を50%以上の家賃で貸せば、差額は給与になりません。ところが、現金の住宅手当は社宅の貸与と認められず、全額が給与として課税されます。
同じ「住まいの補助」でも、寮で貸すか、手当で払うかで、社員の手取りは変わります。
私の新入社員時代の寮
私も新入社員のころ、一棟を借り上げたマンションの寮に住んでいました。
建物はふつうのマンションで、共有の場所も夕食もありませんでした。それでも、同期と過ごした時間は楽しい思い出です。
後日、慶應義塾大学の日吉キャンパスに行く用事がありました。ついでに、伊藤忠の日吉寮を見てきました。
駅から3分で、すぐに分かりました。隣は消防署で、反対側にはコンビニがあります。東横線の車内からも見えます。写真で見ていた以上に、立派な建物でした。


家賃1万5,000円の意味
家賃は月1万5,000円。
新入社員にとっては、ありがたい安さです。そして経理にとっては、確かめるべき数字です。賃貸料相当額の半分を超えているか。

