大日本印刷株式会社(DNP)は、JTCの代表なのか?



「ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー」(JTC)

伝統的な大企業に共通する、内向きで硬直的な組織運営や企業文化を皮肉る「ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー」(JTC)という単語がある。

大日本印刷株式会社(DNP)は、このJTCの代表格と呼ばれることがある。しかし、新たに発表された次期中期経営計画では、自己資本利益率(ROE)10%とPBR(株価純資産倍率)1倍超を目指すという意欲的な目標を掲げ、市場から注目を浴びているという。

これまでDNPは、ROE目標を5%に設定していたが、今回の目標はかなり高い。ただ、ROEは企業自身がコントロールできる数字であるため、実現可能性は高いとされている。

一方、PBRは株価に左右されるため、企業自身がコントロールできる数字ではない。実際、過去10年でPBRが1倍を超えたことは一度もない。

DNPがPBRを経営目標に掲げたのは、東京証券取引所が新たに「PBR1倍割れの企業には改善計画の開示を求める」という方針を打ち出したことがきっかけである。

また、世界最大のアクティビストである米エリオット・マネジメントがDNPの株を取得し、改善を求めたことも大きな外圧となった。エリオットは、DNPの高い競争力を評価し、多額の不稼働資産を売却することで成長事業の投資や株主還元に取り組むよう要求した。

DNPが次期中期経営計画で掲げた目標は、企業がより成長し、株主還元を増やすために、競争力の向上やコスト削減などの取り組みを行うことを意味している。市場は、DNPがPBRを目標に掲げたことを好感し、株価が上昇している。

これまで、大企業の中には内向きで硬直的な組織運営や企業文化を持つという指摘があり、それがJTCという言葉で表現されてきました。しかし、こうした状況が変化し、企業が市場と向き合う覚悟を決めるようになってきていることがDNPの例からもうかがえます。

今後、世界的な競争がますます激化する中で、企業は市場との接点を深め、積極的なコミュニケーションを行うことが求められるでしょう。また、企業自身も自己資本利益率などの数値目標を掲げ、社会的価値を高めるための具体的な取り組みを進める必要があります。

経済環境の変化により、企業が抱える課題はますます複雑化していくことが予想されます。しかし、こうした状況においても、企業が持つ競争力を最大限に引き出し、社会的価値を高めていくことが求められるでしょう。それには、企業が自らの状況を客観的に把握し、適切な判断を下すことが欠かせません。