サントリーは非上場なのになぜ有価証券報告書で決算書を公開しているのか?(企業内容等開示制度について)



サントリーは非上場です

サントリーホールディングス(以下、サントリー)は、非上場企業の代表格とも言われています。その子会社であるサントリー食品インターナショナルは2013年に上場しましたが、親会社であるサントリーは非上場を維持しています。

2015年7月28日付の日経新聞で「サントリーが上場検討 18年にも、金融機関と協議へ 」という報道がありましたが、2018年4月末現在において、公式にリリースされたものはありません。

そんなサントリーですが、非上場であるにも関わらず、毎年、金融庁に有価証券報告書(および半期報告書)を提出しています。なぜ、有価証券報告書の提出が必要なのでしょうか。

有価証券報告書の提出義務者とは

有価証券報告書の提出に関しては、金融商品取引法の第24条が根拠条文となっています。しかし、実際の条文にあたっても、とても難解な文章で構成されており、正直言って理解不能です。

ウソのない範囲で簡単に書くと、有価証券報告書の提出義務者は以下の3つのタイプに分けることができます。

1)上場会社

2)有価証券届出書を提出した会社

3)株主数1000人以上、かつ、資本金5億円以上の会社(外形基準)

3つのタイプについて

1番目の「上場会社」については説明不要だと思います。東京証券取引所などにおいて、その株式が売買されている以上、企業内容を開示する義務があることは一般的に理解できるところです。

説明が必要になるのは、2番目の「有価証券届出書を提出した会社」であると思います。

しかし、2番目の説明に入る前に、3番目の「株主数1000人以上、かつ、資本金5億円以上の会社(外形基準)」を理解しましょう。

有価証券の流通性

3番目の「株主数1000人以上、かつ、資本金5億円以上の会社」は、非上場だとは言え、株主数が多いため、有価証券の流通性(流動性)があるといえます。

株主が1000人(2008年の改正前は500人)もいると、保有株式をほかの人に売りたいと思う人、買いたいと思う人もいるはずです。そのようなときに何を基準に価格を決めればよいのでしょうか。もっと有価証券に関する情報が必要です。株主総会で一定の計算書類は開示されますが、有価証券報告書に比較して情報量が少ないのです。

有価証券報告書を作るということ

しかし、有価証券報告書を作成することは企業にとって大きな負担となります。負担のうち、主なものは、「連結財務諸表の作成」「開示実務ができる人材の確保」「監査報酬の発生」です。なかでも、監査報酬は数百万円単位(最低でも700万円ぐらい)であり、ハードルは高いです。

そこで、外形的に「資本金5億円以上」という金額基準を設けて、そのような企業は社会に与える影響も大きいし、コスト負担にも耐えられるだろうとして、企業に開示義務を課しているのです。

さて、サントリーの株主数は、2017年12月末現在で「80人」です(資本金は700億円)。したがって、サントリーはこのタイプというわけではいのです。

有価証券届出書とは

さて、2番目の「有価証券届出書を提出した会社」に戻ります。

そもそも、この「有価証券届出書」とは何なのでしょうか。名称に「届出書」とあることからも、何かしらの活動にあたって届け出るものだということは分かります。

その行動とは、会社が有価証券の募集や売出を行う場合です。なお、この募集や売出についても、「50名以上を対象に1億円以上」という人数と金額で基準が付けられており、その影響度やコストを勘案しています。

この有価証券届出書の内容は、ほとんど「有価証券報告書」と同じですが、募集や売出に関する「証券情報」を記載されているのが特徴です。いまだと、IPO爆上げで有名になった「HEROZ株式会社」の有価証券届出書がEDINETで見られますね。

なお、「有価証券届出書」を提出して、「上場会社」となった場合は、1番目のタイプに該当して開示義務が発生することになります。

有価証券は「株式」だけではない

上場と非上場の違いは、一般的には「株式」が証券取引所で売買されているかどうかによります。

しかし、金融商品取引法で規定される有価証券とは「株式」だけではないのです。国債や社債などの債券や出資証券、受益証券も含まれます。

つまり、「社債」を発行する会社も「有価証券届出書」を提出する義務があります。

そして、一度「有価証券届出書」を提出すると、免除要件に該当しない限り、その後は「有価証券報告書」を継続して提出するのです。これは上場廃止になった会社も同じです。上場廃止=非上場として、「有価証券届出書」の提出有無で判断されるというわけです。

さて、サントリーは社債を発行しています。単体だけでも、1940億円の社債を負債の部に計上しています。これでお分かりですね。サントリーはこの2番目のタイプに該当して、開示義務が発生しているのです。

あとがき

数学検定というものがあることを知りました。

英語検定、漢字検定より知名度・人気度は劣りますが、2017年度は37万人が受検しているようです。(英検:300万人、漢検:200万人)

1992年に初めて開催されていますので、私が学生のころには存在しなかった資格試験です。どうりで知らないわけです。

経理部門で働いていると、数字に強いように思われますが、必ずしも「数学」に明るいわけではありません。

「数学」を復習するついでの目標として、7月に受検してみようかと思っています。