サントリーは非上場なのになぜ有価証券報告書で決算書を公開しているのか?(企業内容等開示制度について)

サントリーホールディングスは、非上場企業の代表格です。子会社のサントリー食品インターナショナルは上場しています。けれども、親会社は上場していません。

それでも毎年、EDINETに有価証券報告書を提出しています。連結財務諸表はIFRSで作り、半期報告書も内部統制報告書も出しています。上場会社とほとんど変わらない書類一式です。

私も以前は、非上場の会社の財務諸表は外から見られないと思い込んでいました。

なぜ、非上場の会社が開示を続けるのでしょうか。

提出する会社は、三つの入口で決まる

有価証券報告書を出す会社は、金融商品取引法第24条第1項で決まります。条文は長く、一読ではまず頭に入りません。

嘘のない範囲で簡単にすると、入口は三つです。

入口 中身 条文
上場 株式などを金融商品取引所に上場している 第24条第1項第1号
届出 有価証券の募集・売出しで届出をした 同項第3号
外形基準 株主が1,000人以上いる 同項第4号、施行令第3条の6第6項

外形基準には逃げ道があります。資本金が5億円未満なら、株主が1,000人以上いても提出はいりません。同項のただし書です。

サントリーは、外形基準には当たらない

2024年12月31日現在、サントリーホールディングスの株主は83人です。資本金は700億円で、株式はすべて譲渡制限株式です。

株主が1,000人に届かないので、三つめの入口からは入っていません。もちろん上場もしていない。残るのは二つめの「届出」です。

入口は、社債だった

金融商品取引法でいう有価証券は、株式だけではありません。社債も有価証券です。

社債を50名以上に向けて募集し、総額が1億円以上なら、届出がいります。50名は施行令第1条の5、1億円は法第4条第1項第5号の線です。

一度届出をすると、その社債は第24条第1項第3号に当たります。そこから毎年、有価証券報告書が必要になります。

2024年12月末で、サントリーホールディングスの単体の社債は約3,157億円。2024年6月には「発行登録書(社債)」も出しています。社債を広く売るたびに、届出の入口をくぐり直していることになります。

株式なら抜けられる道が、社債にはない

届出をした会社でも、提出をやめられる場合があります。ただし、抜け方が株式と社債で違います。

株式なら、提出を始めて5年が過ぎ、株主が300人未満になれば止められます。承認を受けることが条件です(第24条第1項ただし書、施行令第3条の5)。この道は株券などに限られ、社債には使えません。

社債は、所有者が内閣府令の定める数を下回ったときなどに、承認を受けて止めます。根拠は施行令第4条第2項第3号です。ただ、公募した社債には大勢の持ち主がいます。社債が残っている限り、事実上は出し続けることになります。

非上場でも開示を続けるのは、資金を社債で広く集めた対価です。

EDINETで「その他の参考情報」を開く

気になる非上場会社があれば、EDINETで有価証券報告書を開いてみてください。見るのは、最後のほうの「その他の参考情報」です。発行登録書が並んでいれば、その会社の開示義務は社債から来ています。