ブラックマンデーの教訓:経理マンが語る、あの日とこれからの経営

ブラックマンデーの教訓:経理マンが語る、あの日とこれからの経営

「ブラックマンデーか。あれは本当に忘れられない日だよ」

そう語るのは、横浜にある老舗メーカーで経理部長を務めた経験を持つ、Aさん(70代)だ。1987年10月19日、ニューヨーク株式市場が歴史的な暴落に見舞われたブラックマンデー。当時、Aさんは30代の若手経理マンとして、未曾有の経済危機を目の当たりにした。

手作業の経理業務とブラックマンデーの衝撃

「当時はパソコンなんてなく、経理業務は全て手作業だった。伝票の仕訳、元帳への転記、計算機での集計…月末の決算期ともなれば、徹夜は当たり前。そんな中でのブラックマンデーだったから、もうてんやわんやだったよ」

Aさんは当時を振り返り、苦笑いを浮かべる。株価の暴落は、取引先の倒産リスクや為替変動など、経理部門に多大な影響を及ぼした。連日遅くまで残業し、数字と格闘する日々が続いたという。

「あの頃は、情報収集も大変だった。今みたいにインターネットで簡単に情報が手に入るわけじゃないからね。新聞やテレビのニュース、証券会社の情報などを頼りに、必死で状況を把握しようとしたよ」

ブラックマンデーが突きつけた、企業経営の課題

ブラックマンデーは、Aさんにとって、企業経営における財務の重要性を痛感する出来事だった。

「株価の暴落で、多くの企業が大きな損失を出した。しかし、中には、堅実な経営を続けてきたことで、比較的軽微なダメージで済んだ企業もあった。この違いは、まさに財務体質の差だったんだ」

Aさんは、ブラックマンデーを教訓に、自社の財務体質を強化することの重要性を再認識したという。

「無駄なコストを削減し、本業に集中すること。そして、内部留保を積み増し、いざという時に備えること。当たり前のことのようだけど、これが実は一番難しい。しかし、ブラックマンデーのような危機を乗り越えるためには、こうした地道な努力が不可欠なんだ」

株価に左右されない経営とは

Aさんは、ブラックマンデー以降、株価の変動に一喜一憂しない、安定した経営を心掛けるようになったという。

「もちろん、株価は企業の業績を測る一つの指標ではある。しかし、短期的な株価の変動に左右されることなく、長期的な視点で企業価値を高めていくことが重要なんだ」

具体的には、

  • 本業への集中: 無駄な事業への投資を抑え、収益性の高い事業に経営資源を集中させる。
  • 財務体質の強化: 内部留保を積み増し、有利子負債を圧縮するなど、財務の健全性を高める。
  • リスク管理の徹底: 為替変動や金利変動などのリスクをヘッジし、不測の事態に備える。

といったことを実践してきた。

経理マンとしての誇りと未来へのメッセージ

「経理は、企業の『血液』を管理する仕事だ。一見地味に見えるかもしれないが、会社の存続に不可欠な、非常に重要な役割を担っている。だからこそ、常にプロ意識を持ち、正確かつ迅速な業務を心掛けることが大切なんだ」

Aさんは、経理マンとしての誇りを胸に、後進の育成にも力を注いできた。

「ブラックマンデーのような危機は、いつまた起こるかわからない。だからこそ、私たちは過去の教訓を忘れず、常に最悪の事態を想定し、備えておく必要がある。それが、企業を守り、未来につなげることにつながるんだ」

Aさんの言葉は、ブラックマンデーという歴史的な出来事を経て、企業経営における経理の重要性を改めて認識させてくれる。そして、これからの時代を生き抜くための貴重な教訓を与えてくれる。

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