なぜ「固定資産の減価償却」が誕生したのか?(田中靖浩「会計の世界史」)

ピックアップ

「会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語」

田中 靖浩

要約

「会計ギライ」の方を悩ませる、数字および複雑な会計用語は一切出てきません。「世界史ギライ」の方をげんなりさせる、よく知らないカタカナの人や、細かい年号もほとんど出てきません。登場するのは偉人・有名人ばかり。冒険、成功、対立、陰謀、愛情、喜びと悲しみ、芸術、発明、起業と買収…波乱万丈、たくさんの「知られざる物語」が展開します。物語を読み進めると、簿記、財務会計、管理会計、ファイナンスについて、その仕組みが驚くほどよくわかります。

第1部 簿記と会社の誕生 3枚の絵画

第1章 15世紀イタリア 銀行革命 『トビアスと天使』
-1 絵描きに「トビアスと天使」の注文が殺到した理由
-2 地中海で大活躍したリズカーレとそれを助けるバンコ
-3 イタリアの黄金期を支えたバンコと簿記
第2章 15世紀イタリア 簿記革命 『最後の晩餐』
-1 レオナルドと「簿記の父」の運命的な出会い
-2 処刑を逃れたコジモが支えたルネサンス
-3 公証人を頼らず、自ら記録を付けはじめた商人たち
-4 簿記革命とメディチ銀行の終わり
第3章 17世紀オランダ 会社革命 『夜警』
-1 神が中心から人間が中心の時代へ
-2 レンブラントとオランダの栄光
-3 オランダで誕生した株式会社とストレンジャー株主
-4 短命に終わったオランダ黄金時代

第2部 財務会計の歴史 3つの発明

第4章 19世紀イギリス 利益革命 『蒸気機関車』
-1「石ころ」の活用から世界トップへ躍り出たイギリス
-2 蒸気機関車のはじまりと固定資産
-3 画家も株主も興奮した鉄道狂時代
-4 19世紀の鉄道会社からはじまった「利益」
第5章 20世紀アメリカ 投資家革命 『蒸気船』
-1 西の新大陸へ、海を渡った移民と投資マネー
-2 崩壊前夜、ニューヨーク・ラプソディ
-3 大悪党ジョー、まさかのSEC初代長官に就任
-4 パブリックとプライベートの大きな分かれ目
第6章 21世紀グローバル 国際革命 『自動車』
-1 自動車にのめり込んだ機関車運転士の息子
-2 海運とITで覇権を握ったイギリスのグローバル戦略
-3 金融資本市場のグローバル化と国際会計基準
-4 増えるM&Aとキャッシュフロー計算書

第3部 管理会計とファイナンス 3つの名曲

第7章 19世紀アメリカ 標準革命 『ディキシー』
-1 南北戦争から大陸横断鉄道へ
-2 大量生産する工場の分業と原価計算
-3 ライバルを潰しながら巨大化する企業
-4 南部から北部へ旅立つコカ・コーラとジャズ
第8章 20世紀アメリカ 管理革命 『聖者の行進』
-1 シカゴからはじまったジャズと管理会計の100年史
-2 分けることで分かる「管区」由来のセグメント情報
-3 フランス系・デュポンの起こした管理会計革命
-4 クロスオーバーがはじまった音楽と会計
第9章 21世紀アメリカ 価値革命 『イエスタデイ』
-1 マイケル・ジャクソンに学ぶ価値(バリュー)思考
-2 企業価値とは何か?
-3 投資銀行とファンドの活躍を支えたファイナンス
-4 うつろいやすい「価値」を求め、さまよう私たち

ひとこと

本書は、会計の本としては異色の存在です。歴史物語を読んでいるような感じになります。

その中で、私がとても興味を持ったのが「第2部 財務会計の歴史」です。

いまでこそ当然の「固定資産の減価償却」という仕組みが、どのような歴史的な背景のもとで誕生したのか。

知らなくても問題ないけれども、本書で書かれている内容を知っていると知識の奥行きが深くなりますね。

また、本書の構成が工夫されています。3部立てで、「3枚の絵画」「3つの発明」「3つの名曲」に絡めて説明する形式となっています。

ここまで歴史を調べあげた著者の好奇心の強さに感心します。

あとがき

「休眠預金制度」が2019年1月から始まります。

10年以上にわたり放置された預金が、NPOなどの社会事業に活動資金としてわたるというもの。

私自身は、2017年夏に銀行口座の断捨離を行いました。

その際に、当時放置していた「三菱東京UFJ銀行」「三井住友銀行」「埼玉りそな銀行」「じぶん銀行」「ソニー銀行」「新生銀行」「ジャパンネット銀行」の口座を解約しました。

それでもまだ、現在もほとんど使用していない口座もあるので、もっと整理したいと思います。